広告ブロック使用率50%の現実:ウェブ広告の現状は厳しく過渡期に:Adsenseやアフィリエイトの未来

2019 年 11 月 25 日 Categories: IT | Tags:

【現状】

ウェブページに表示される広告を非表示にする目的で開発されたブラウザ向けの拡張機能の搭載率がどんどん上がっているようだ。

広告ブロックやコンテンツブロッカーと呼ばれるこれらは今現在、かなり高い精度でウェブ広告の大半をきれいに“掃除する”。

少なくとも、大手のウェブ広告が表示されることはまずないといっていいだろう。

正直、サイト運営者にとっては頭の悩ましい問題だ。
 
そこで、広告ブロックについての現状と、それにまつわる広告配信・アフィリエイトサービスの今後について、ここで考察してみたい。

広告ブロック搭載率

これは比較的、簡単に計ることができる。

AdBlockなどでサイト上の広告が消された場合、広告配信サービスの側では表示回数に反映されないため、それらとサーバーサイドでカウントした実際のアクセス数を比較すればいい。

現状、筆者のブログでは常時30~40%のギャップがある。つまり、それだけ広告がブロックされているということだ。

ウェブでいろいろ調べてみると、ところによってはそれが50%近くに達する場合もあるらしい。

筆者のサイトの値がやや低めなのは、平日のアクセス数が多い=会社や学校からのアクセスしているため、おそらく組織の方針で使っているブラウザに拡張機能を入れられないせいだろう。

この50%という数字は、そのまま広告による収入の機会を失っているということに等しい。

ブラウザと広告ブロック機能

広告ブロックの拡張機能は、昔に比べて格段に機能性・安定性が増し、また精度も高まっている。

主要なツールのほとんどが、インストールするだけで大半の広告をブロックするようになる。

それでいて、重くなるなどのデメリットはほとんどないのが現状だ。

基本的に、広告ブロック機能が普及しきった段階で、ウェブ広告の大半が表示されなくなると考えたほうがいい。

公式のコンテンツブロッカー

それどころか最近では、ブラウザなどにオフィシャルの機能として広告もブロックできるコンテンツブロッカーが搭載されることが増えてきた。

これは悪質な広告やサイトに対応したり、ユーザーのプライバシーを保護したりするためのもので、実装したのには正当な理由がある。

今のところ既存の広告ブロック機能に比べて見劣りするものばかりだが、今後これらがより使いやすくなり、特にユーザーがブロックリストを簡単に公開・取得できるようになったとき、広告ブロック機能よりも影響が大きくなる可能性もある。

広告ブロックとWebサービス

GoogleのAdsenseのようなメジャーな広告配信サービスは現時点ですでに、ほぼ確実にブロックされている。

HTMLの構造やJavaScriptを解析しないとうまくブロックできないはずの動画配信サイトですら、そのほとんどで広告は表示されない。

もちろん、YouTubeやニコニコ動画も例外ではないのだ。

比較的マイナーなアフィリエイト系の広告でさえ、あっという間に対応されることを考えると、広告配信者やサイト運営者に逃げ場はなくなりつつある。

もはや「~だから大丈夫」とはいえない状況だ。

事実、広告だけでなくGoogle Analyticsのようなアクセス解析までブロックされることが多いくらいなのだから。

上記のとおり、これはプライバシー保護の観点からも仕方のないことなので、この流れが止まることはまずない。

広告ブロックのビジネス的側面

多くの場合、広告が表示されないとなると、広告主(出稿者)にとってウェブ広告の魅力が大きく減退する。

だが、問題はそれだけではない。

現在では広告サービスや大手SNSによる、クッキーなどを利用したユーザーの行動追跡=トラッキングに対して、世界的に非常に厳しい目が向けられるようになっている。

ということは必然的に、ウェブ広告の効果を解析することが難しいということだ。

それはさらに、広告主にとってウェブ広告のメリットが小さくなることを意味する。

つまりはこうだ。

広告が表示されない、トラッキングもできない、魅力が低下する、そして最後には広告出稿料の減少にいたる。

典型的な悪循環だ。

しかも厄介なのは、今後広告ブロックが普及すればするほど、このサイクルは早まるということ。

おそらくその流れが止まるのは、広告ブロックが90%以上に達し、ウェブ広告分野が崩壊したときだけだろう。

PCの現状

PCでは昔から広告ブロックの拡張機能が存在していることから、今後は、もはやブラウザに入っていて当然になるものと思われる。

まだ導入していないユーザーは、その存在を知らないか、組織から禁じられているだけだろう。

今のところ法人ではセキュリティの観点から、個人がブラウザの拡張機能を導入することを禁止しているところが多いようだが、今後、トラッキング(追跡行為)を防いだり余計なトラフィックを減らしたりするために、むしろ積極的に広告ブロックを導入するようになると、もはや歯止めがきかなくなる。

スマートフォンの現状

普及しているとは言いがたい。

というのも、Androidではシェアの高いChromeが拡張機能に対応しておらず、iPhoneなどのiOSではそもそもアプリに拡張機能のような仕組みの導入を認めていないためだ。

ただし、この状況も長続きしそうにない。

AndroidではPC版Chromeの拡張機能に対応した「Kiwi Browser」などが、iOSではあらかじめ広告ブロック機能を組み込んだブラウザや、OSの拡張機能としてのコンテンツブロッカーが登場してきた。

今では端末としてPCよりもスマートフォンのほうが圧倒的に多いため、これから無料の機能が増えてくると普及率に加速度がつき、全体として非常に大きな変化があるだろう。

ウェブ広告壊滅が起こりうるとしたら、それをもたらすのはモバイル分野かもしれない。

広告ブロックへの対応

いくつかあるものの、いずれも問題があり、実質的にあまり意味がないと思われる。

コンテンツを表示させない

これは最も古典的で、最も問題があるやり方だ。

この10年くらいのあいだに、選択肢としてはほぼ消えたと考えていい。

理由としては、サイトからの離脱率が増すだけだからだ。

ユーザーの側からすれば選択肢は他にいくらでもあるのだから、コンテンツを見せてくれないというなら他のサイトへ行けばいいだけの話だからだ。

あらゆるサイトが同じ対応をすれば各ユーザーは嫌々ながらも広告ブロック機能をオフにするしかないのかもしれないが、Webは昔からWikipediaのように広告なしで運営しているサイトが多く存在する。

結局は、ユーザーがそちらへ流れてしまうだけだ。

規約で禁止する

この方法も実質的に意味がない。

そもそも規約で禁止したところでそれを守るユーザーが増えるとは限らず、また規約への同意を有効にするためには、どこかで各ユーザーにボタンを押してもらうなど明示的なアクションを要求することになる。

だが、ちょっと見たいだけのサイトで、わざわざ規約を読んだりアカウント登録したりする人がいったいどれだけいるというのか。

コンテンツやサービスがすでに十分魅力的ならともかく、そうでないならむしろユーザー離れを促す自滅行為になってしまう。

代替広告の表示

本来の広告が表示されているかJavaScriptでチェックして、表示されていなければ別の広告を挿入する。

ただし現在の広告ブロックは、もはや大半の広告サービスに対応し、しかも動的に挿入されるHTMLもカットできる。

Amazonアソシエイトの画像やリンクでさえきれいさっぱり掃除されることもあるくらいなので、わざわざ労力を費やしてまでやる価値があるとは思えない。

警告文の表示

広告が表示されていないことを検知したあと、該当ユーザーになんらかの警告のメッセージを提示する。

基本無料サービス(フリーミアム)の場合、広告収入がないと事業として成立しないため、理屈だけ考えればそれを表示させずに内容だけ見ることは、一種の「ただ乗り」(フリーライド)のようにも思える。

しかし、それはあくまでたて前の話であって、だからといってユーザーにいちいち広告ブロック解除を要求することは実質的に難しい。

これも結局はユーザーの印象を悪くし、利便性を下げるだけだ。

ユーザーに事情を説明する

効果は薄いかもしれないが、最近はちらほらと見かける対応方法のひとつ。

ユーザーに対して警告するのではなく、悪目立ちしない範囲内でページの一部に「無料のこのサービスを維持するために協力してください」と表記する。

広告ブロックを使うユーザーを悪者と決めつける上記の方法よりはましかもしれないやり方だ。

だが、それと同じで、結局はユーザーの良心に委ねられることになる。

そもそも、たいてい広告ブロック機能は常に「オン」の状態になっているため、ユーザーにとっては特定サイトだけオフにする行為自体がめんどくさい。

まさに効果は薄いが、何もしないよりはましといったところだろう。

広告ブロックは著作権侵害?

一方で、ページの内容を勝手に書き換えることは著作権侵害だから、やっぱり悪いことだとする意見もあるが、これは二つの点で大きな考え違いをしている。

改変は違法行為ではない

ひとつは、そもそも著作物の改変が禁止されているわけではないことだ。

駄目なのはあくまでそうした改変したものを勝手に公開・頒布(配布)したり、営利目的に利用したりすることであって、改変行為そのものではけっしてない。

そうでなければ、自分が買った本に直接メモ書きすることまで違法になってしまう(マナーの問題は別として)。

それ以前に、Webページというものはその仕組み上、どう表示するかはブラウザの解釈しだいであって、元より表示方法が強制されているわけではないのだ。

つまりページの表示方法は、初めからブラウザ開発者やユーザーの手に委ねられている。広告の提供者側が、自分たちの都合だけで押し付けられるものではない。

ましてや、視覚障害者などにとっては見やすくするためにどうしても表示形式を変えなければならない場合もある。この観点からも、改変は違法どころか社会的に必要なことであるともいえる。

本当に改変といえるのか

そもそも論として、Webページの表示の一部を変更することが改変といえるのかどうかも怪しい。

Webページはスタイルシート(CSS)と呼ばれる形式で見た目を変更することができるのだが、これはユーザーが簡単に一部、または全部を変更できるものだ。

そう、広告ブロック機能に限らず、スタイルシート変更機能でも表示の変更は可能なのだ(有名な拡張機能にStylusがある)。

元々そういった仕組みであるのに、広告部分を非表示にしただけで改変と呼べるかどうかは、かなり怪しい。

そうなると、著作権うんぬんの話ではなくなってくる。

広告表示に創作性?

別の面では、広告の表示が著作物の一部とみなされるかどうかも甚だ疑問だ。

仮に新聞や雑誌の1面に記事と広告が混在していたとして、著作物と呼べるのはどこだろうか。

もちろん、記事部分のみだろう。

著作権が認められるのは、創作性がある場合のみだ。広告とページの内容に直接の関連性がないのなら、なおさら厳しい。

広告ブロックの今後

広告を表示させる側での対応が難しい以上、やはり社会的な規制やユーザーのモラル向上に期待するしかないのだが、それも期待薄だ。

なぜなら、悪質なサイト・広告も存在するから

悪質なサイト・広告の存在

残念ながら、Webでは問題のあるサイトも多い。

コンテンツブロッカーは広告ブロック目的のものであると同時に、悪意あるコンテンツからユーザーを守るため、すなわちセキュリティのためのものでもある。

ユーザーが自衛するための手段として当然の機能となりつつあるのだ。

各ブラウザやセキュリティソフトが部分的にせよ、そうした機能を標準で搭載しはじめているのはそうした背景がある。

昨今、大手IT企業によるユーザーの追跡行為が世界的に問題視されているように、この流れは止まるどころか、今後ますます強まるだろう。

通信量制限のニーズ

PCはともかくモバイル環境だと、常に通信量の問題がつきまとう。

実際には広告の表示に必要な通信量は微々たるものだが、最近では動画広告も増えており、それらが積み重なるとばかにならない。

単に広告が目障りという感情的な理由だけでなく、こうした実質的な理由もあることが広告ブロックのニーズをさらに高めることにつながっている。

広告ブロックも進化する

仮に各サイト管理者や大手ブラウザベンダーがこぞって広告ブロック対策を行ったとしても、抜本的な対策にはならないだろう。

今のところコンテンツブロッカーの機能は単純に特定URLへのアクセスを遮断し、該当HTML要素を削除するだけだが、実装の仕方しだいでは正常に動作しているように見せかけて表示だけ消すことも可能だ。

現在は、ブラウザ開発もオープンソースの時代。拡張機能としてではなくブラウザ自体にそうした機能をつけた場合、もはやローカルのJavaScriptやサーバーサイドでは検知のしようがなくなる。

すでに、iOS向けの一部ブラウザが実際にそうしているように、今後「もはやどうしようもない」事態に陥ることは十分予想できる。

まとめ

最初に触れたように、今後、広告ブロック機能が増えることはあっても減ることはないだろう。

それどころか、爆発的に普及率が高まる可能性は常にある。

そうなったとき、広告関連業界だけでなくフリーミアムのWebサービス全体が大きな変革を迫られるのだ。

この流れは止まらず、対処法も特にないというのがまさに時代の転換点を示しているのかもしれない。